【カタコト日本語×レジ】


【カタコト日本語×レジ】

クリスマスの季節になると、「家族へのプレゼントを買いに行くんだ。」という生徒が多くなります。クリスマスに合わせて国に帰ることの多い外国人は、両親、兄弟、友人それぞれにプレゼントを用意するようです。また、日本の丁寧で美しい包装にも感動する外国人が多く、デパートの店員さんが商品を美しく包装する様子の動画がインターネットやSNSでアップされることもあります。

私が買い物の際に「これは外国人に伝わるのかな」と疑問に思う質問は、店員さんの「ご自宅用ですか。」という質問です。さらに、「プレゼントで」と答えると「ラッピングは箱と袋のどちらになさいますか。」や、「有料と無料がありますがどちらになさいますか。」などと質問が続きます。そう言って外国人の頭の上にはてなマークを浮かばせてしまった経験はありませんか。

 

【私たちにできること】

ます、外国人にとって「ご自宅用ですか」という質問が難しいということはお分かりいただけると思います。これは「プレゼントですか。」と聞くようにすれば問題ありません。相手も「はい」か「いいえ」で答えられるので、とてもシンプルです。次にラッピングの方法についてですが、まず『ラッピングの方法が選べること』は、相手にとって当たり前ではないと考える必要があります。私たちにとってはあまりにも当たり前なので、「箱と袋のどちらになさいますか。」や、「有料と無料のラッピングのどちらになさいますか。」という質問が投げかけられることを事前に想像し、なんの疑問もおぼえず答えることができます。しかし、相手にそのような概念がなければいったい何を聞かれているのか、質問の意味の見当もつかないのではないでしょうか。その場合はやはり、情報を視覚で判断できるようにするとよいでしょう。ラッピングのサンプルを用意し、ひとつには「¥300」、もう一つには「¥0」と記載しておくのです。そうすれば、「ラッピングの方法が選べると」いうことと、「値段が違う」という2つの情報を瞬時に受け取ることができますよね。繁忙期の接客を効率よく行うためにも、このような準備は有効だと思います。外国人客の来店が多い店舗の皆様は、ぜひ試してみて下さい。


カタコト日本語実践例④「至急ご連絡ください。」はどう言う?


外国人が日本語を話さなければならない場面で最も難しいもののひとつが、テレフォンセンターの方などとの電話でのやりとりです。繰り返される聞きなれない敬語が難しいだけでなく、相手の口元も見えず音声も濁ってしまうため言葉がとても聞き取りづらいのです。それが留守番電話となればなおさら難しくなります。緊急の用事で連至急連絡が必要な場合、「至急ご連絡ください。」と言うだけで外国人に伝わるでしょうか。「至急」も「連絡」も2つ以上の漢字から成り立つ漢語です。漢語はフォーマルな場面で使われることが多く、初級の生徒にとっては少し難易度が高いのです。そこでまずは、ルール3の漢語を避けるから始める必要があります。

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難易度 ★★☆☆☆

使うポイント=3、4 (漢語を避ける、文を分解する)

 

「電話します。お願いします。とても急いでいます。」

「早く電話をします。お願いします。」

「問題があります。早く電話してください。」

 

“急いでください”というフレーズは、タクシーを使う場面などでも使える表現なので、学習者自ら覚えたがることもあります。そのため、「急いでください」がそのまま伝わることもあるでしょう。そうでなければ「早く」と、時間を明確に示すようにします。

「問題」は漢語ですが、“No problem”を直訳して「問題ない」とというフレーズを覚えている外国人もたくさんいますす。「問題がありました。急いで電話してください。」日本語に慣れている外国人であれば、このような表現でも伝わるでしょう。みなさんが外国人と会話をしているときも、相手が話す言語の細かい文法表現がわからなかったとしても、知っている単語がいくつか並べばとなんとなく言わんとしていることの想像がつくということがあると思います。ということはつまり、相手がわかるような単語を使うようにすれば「外国人に伝わる日本語」になるということです。「至急」と「早く」、「連絡」と「電話」であれば、どちらの方が相手が知っている可能性が高いか。どちらの方が簡単かを考えるようにすれば、相手にキャッチしてもらえる単語の数が増えるはずです。言っていることが伝わらないもどかしさと、言われいてることがわからない相手のイライラが伝わってきて焦ってしまうこともあるかもしれませんが、なるべく簡単な単語で、短い文章を並べるように話してみてください。


カタコト日本語実践例③「ごみは分別して出してください。」はどう言う?


あなたの家の近所に外国人は住んでいますか。近隣外国人住民との文化や習慣の違いから、騒音やごみの出し方でトラブルになるということも聞いたことがありますが、みなさんのところはどうでしょうか。私の生徒の中にも、最近引っ越しをした人がいます。フランス人の彼は奥様と3歳の息子さんとの3人暮らしで、より広い家を探し続けてようやく引っ越すことにしたのです。ところが、入居からたった1週間後「騒音が気になる」と下の階の方から注意を受けてしまったのです。そこで彼は、子どもが走り回る際の騒音を防ごうと、カーペットと子供用スリッパの購入し、下の階の方へ謝罪のお手紙を書くことにしました。この真摯な対応に下の階の方も納得してくれたようです。

一方、私が近所のカフェのテラス席で、大きなスーツケースを傍らにコーヒーを飲んでいる男性を見かけた時のことです。彼は食事が終わると、食べていたサンドイッチのパッケージや紙カップなどのゴミをテーブルに散らかしたまま去って行ってしまいました。スーツケースを持っていたところを見ると、彼は観光客で日本文化に慣れていなかったのでしょうが、それにしても見ていていい気はしません。でも、彼はただ日本の習慣や文化を「知らなかった」だけなんですよね。ならば、ルールを知ってもらわなければいけません。

「ごみは分別して捨ててください。」ゴミ出しのルールを知らずに、なんでもかんでもごちゃまぜにして捨ててしまう外国人がいたら、あなたはどのように注意すればよいでしょうか。

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難易度 ★★★☆☆

使うポイント=3,4(漢語を避ける、文を分解する)

 

「紙と、プラスチックは一緒じゃないです。別々です。お願いします。」

【解説】

「分別」という単語は、ゴミ捨てという特定の状況以外で使われることが少ないので、伝わらない可能性が高いと思います。また、そもそもその外国人の国には「ごみを分別して捨てる」というルールがなく、その分別するという行為自体が初めてだということも考えられます。

一番いいのは、、実際に彼らの前でごみを分別して捨てるという行動をしながら説明できることです。袋を用意し、「紙のごみはこっち、プラスチックはこっち」と言いながら、見せながら説明してみましょう。

また、「燃える」「燃えない」というのも伝わりにくい言葉です。火の絵が描かれたステッカーやポスターなどを用意して、張り付けておくのも重要でしょう。


カタコト日本語実践例②「チケットがないと入れません。」はどう言う?


外国人が集まるところと言えば、やはり観光地でしょうか。浅草や東京タワー、スカイツリーなどの日本を代表する観光地は、季節や国籍を問わずいつも大勢の観光客でにぎわっていますよね。私が受け持つ生徒は、平均して3年以上日本に住んでいて東京の名所には行きつくしたという人がほとんどですが、そんな彼らは休日を利用して美術館や博物館に足を運んでいるようです。日常的に芸術に触れる習慣があるのですね。

そんな観光地や娯楽施設の入場券は、時に前売り券が必要だったり、ある特定の場所は別のチケットが必要だったりすることがあり、私も時々とまどうことがあります。入口の女性に「申し訳ございませんが、チケットをお持ちでないお客様は入場できません。」と言われてふと思いました。これ、外国人にはどのように伝えているのだろう・・これは、「予約がないと入れない」や、「会員にならないと使えない」など、公共施設での決まり事を伝える際に必要となる表現なのではないでしょうか。

【カタコト日本語】

難易度 ★★☆☆☆

使うポイント=2、4 (ます形で話す、文を分解する)

 

「チケットがありません、入れません。ダメです。」

「チケットがあります、大丈夫です。」

【解説】

「チケットがないと」「チケットがなければ」「チケットがなかったら」のような条件の意味を持つ文法は、日本語学習者、さらには日本語教師にとってもやっかいな文法です。同じ「ない」でも、「ないと」「なければ」「なかったら」と、全て活用が違います。つまり、相手がこれらの活用を勉強していなければ理解するのがとても難しいのです。その場合はまず、「です、ます」の形に戻します。そして文を分解して、禁止の機能(この場合は「ダメです、大丈夫です」)を付け加えるようにします。ポイントは、「チケットがないと入れない」に加え、「チケットがあれば入れる」というところまで言ってあげることです。2つの状況を対比するように説明することで、状況や説明の意味が伝わりやすくなるのです。

 


カタコト日本語実践例①「何か食べられない食材はありませんか?」はどう言う?


昨今の飲食業界では、オーガニック食品やスーパーフードの人気の高まりを初め、アレルギーや宗教などの理由で料理に使われる食材について敏感な人が増えているようです。特に外国人にその傾向が強いと言えるのではないでしょうか。相手が日本人であれば、「何か食べられない食材はございませんか。」と聞けば済むのですが、相手が外国人、しかも英語の話せない人だった場合はどのように質問すればよいでしょうか。

こんな時に活用して頂きたいのが、「カタコト日本語」です。まず、「食べられない」という動詞の形は可能形と呼ばれ、最初に習う「ます形(食べます)」を変換させた形です。可能形を習っていない外国人は、「食べる」という動詞の意味は理解できても、そこに「可能」の意味が含まれるというところまでは理解できません。また、「食材」という単語も難しいでしょう。ここで「カタコト日本語」を使い、外国人に伝わる日本語に言い換えてみます。

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難易度 ★★★☆☆

使うポイント=4、5(文を分解する、YES/NO型の質問)

 【カタコト日本語】

「食べません、食べ物はありますか。」

「アレルギーはありますか。」

「肉、野菜、魚、全部大丈夫ですか。」

【解説】

ここで使ったカタコト日本語のポイントは4の「文を分解する」と、5の「はい・いいえで答えられるように質問をする」です。

“食材”は少し難易度の高い単語です。意味を伝えるためには、より身近な単語を使うか、具体的なものを例に挙げましょう。

”食材”は“食べ物”という身近な単語に言い換えることができ、具体的な例は”肉、魚、野菜”などが挙げられます。

また、「アレルギー」という単語は英語ですが、英語の発音は「アレジ―」で日本語とは発音がまったく違うため伝わらない可能性があります。「アレルギーはありますか。」と質問して相手に伝わらないようであれば、アレルギーという単語を避ける必要があります。

「食べます」や「大丈夫です」といった単語は日常で耳にする機会が多く、日本語を勉強していない外国人でも覚えていることが多いのです。

このようなことを考えると、「食べます、大丈夫ですか。」または具体例を挙げて「肉、魚、全部大丈夫ですか。」な質問が、外国人に伝わりやすい日本語と言えるでしょう。

 

 

 


【カタコト日本語×ネイルサロン】


【カタコト日本語×ネイルサロン】

日本語の授業中に、わたしの爪を見た女性の生徒が「ネイルサロンで使う日本語を学びたい」と言ってきたことがありました。彼女はスペイン人で、スペインにもネイルサロンはあるとのことでしたが、日本のネイリストさんの技術の高さと出来上がりの美しさに感動し、私が通っていたネイルサロンに言ってみたいと言い出したのです。

ネイルサロンや美容院、カフェやファストフード店などでは、来店後の流れがほぼ決まっています。いつもと違う美容院やいつもと違うカフェに行っても、店に入った後に何をするべきかわからずおどおどしてしまうということはありませんよね。「日本初上陸!」のような最新の施設では、独特のシステムがありとまどってしまうこともあるかもしれませんが…。しかし、マクドナルドやスターバックスなど見慣れた店でも、海外で行くと少し緊張したりとまどってしまったりしませんか。ネイルサロンもそのような施設の一つだと思うのです。ネイルサロンや美容院は分刻みで予約が入っていることが多く、一人遅れると次の予約にまで影響を及ぼします。スムーズなコミュニケーションがより求められるお仕事なのではないでしょうか。

 

【わたしたちにできること】

ネイルサロンや美容院は、カフェやファストフード店などと同様使う単語がほぼ決まっています。その代わり、来店客の頭の中にあるイメージと希望をより正しく理解することが大切です。この場合もやはりイラストが便利なのではないかと思います。来店後の流れとともに、来店客が希望を伝える際に必要になりそうな単語を選んで記載しておくのです。

例えば、

施術の流れ

1.ジェルとマニキュアのどちらをご希望ですか

2.手と足どちらの施術をご希望ですか

3.デザインを選んでください

4.希望の爪の長さを選んでください

5.ジェルの色を選んでください

6.ストーンを選んでください

 

これを英語、中国語、韓国語など、あなたのサロンに来店する外国人に国籍に合わせて用意するのです。さらに、爪の長さの希望が理解できるよう「もっと短く」「これで大丈夫」といった表現を記載したり、爪の形やストーンのサイズの希望が理解できるよう「丸」「四角」「大きい」「小さい」といった単語を記載したりするのもいいと思います。「〇〇指だけデザインを変えたい」とか、「付け直し希望(保証期間内に限る)」などといった希望などもうったえられるようにしておけば、希望を理解するのに時間をとられることもありません。あなたのサロンでこれまでに生じた外国人客とのトラブルなどを記録しておき、それを外国語表記にして用意しておけば、次の外国人客とのコミュニケーションの場ではそれを見せて指さしてもらうだけで相手がうったえていることを理解することができます。

 女性のあなたなら、おしゃれがしたい女性の気持ちがわかるはずです。国際的に女性のおしゃれをお手伝いできるなんて、本当に素晴らしいお仕事だと思います。あなたの器用さと技術の高さで、外国人客を驚かせてください。


【カタコト日本語×スーパーマーケット】


【カタコト日本語×スーパー】

見たことがない商品が並ぶ外国のスーパーって、ワクワクしますよね。パッケージがかわいかったり、日本では考えられないような色のお菓子やケーキがあったりして、ついつい買ってしまいませんか。ところがそこで困るのが・・・「読めない。」saltsugerは読めたとしても、fabric softener(柔軟剤)とlaundry detergent(洗濯用洗剤)、manufactured date(製造年月日)expiry date(消費期限)などは、その意味をまず理解していないと間違って買ってしまう可能性がありますよね。その他にも、「3つで1000円」や、「3000円以上購入で配送料無料」などのお得な情報も、外国語表記では見逃しがちです。

 

【私たちにできること】

接客する側の方も、外国人に「洗濯用洗剤」や「消費期限」を説明するのは難しいと思います。そこでご提案したいのは、やはり視覚で情報を取れるようにするということです。つまり、商品名や価格に加え、英語訳を表記するのです。それはきれいに印刷されたものでも手書きでもかまいません。

外国人客の来店が多い店舗では、外国語が話せる店員さんを常駐させるといったことがあるかもしれません。しかしそれでは人件費もかかりますし、外国人を接客するたびにその方を呼び出していては、時間もかかり仕事も滞ってしまう可能性があります。

すべての商品に英語表記を加えるということは簡単ではありません。しかし、一度表記をしてしまえばあとは簡単です。英語表記があるということだけで外国人客も安心して買い物ができ、来客数も増えるかもしれません。一番の理想は、メーカーさん側が英語表記を加えるということなのですが、それまでには少し時間がかかるかもしれませんね。

 

また、お得な情報やアレルギーなどの健康に関わる注意事項などは、イラストでもいいかもしれません。「ひとつ300円。ふたつで500円。」という情報であれば、「●=¥300。●●=¥500」のようにして、●の部分は商品の絵を描いたり、写真を印刷して張り付けたりしてもいいですよね。「アレルギー」は英語ですが、英語と日本語では発音がまったく異なります。口頭で説明するのが難しいので、allergy(アレルギー)と書いた横に、ピーナッツや小麦、卵のイラストを描くのはどうでしょうか。あなたの店舗で購入した商品によって健康被害が生まれてしまうのを防ぐことができるはずです。ぜひ試してみて下さい。


【カタコト日本語×会社】


【カタコト日本語×会社】

日本の企業や日本人に囲まれた環境で仕事をしている外国人の前に立ちはだかる壁は、言葉の壁だけではありません。もちろん会社などのフォーマルな場面で使われる日本語は、日本語教育でも中級以降で学ぶ、ちょっと難易度の高い日本語です。そんな日本語の他に外国人を悩ませる壁とは、どんなものでしょうか。それは、文化の違いです。特に自国の会社と日系の会社では、当たり前とされることが全く違うのです。例えば就業時間の長さ、各業務の進捗スピード、休憩や休暇の取り方など、挙げればきりがありません。私の生徒からも、「就業時間を過ぎ自分の仕事も終わっているのに帰ろうとしないのはどうして。」「どうしてわざわざFAXを使うのか?紙の無駄なのではないか。」など、様々な質問を受けます。

【私たちができること】

私が考える、外国人社員との業務を円滑に進めるポイントは2つあります。

1つ目は、ルールではないが一般に常識とされている日本企業に残る風習を書き出し、外国人社員に認識してもらうことです。外国人としても、知らぬ間に失礼な行為をしていた、知らぬ間に人を悪い気にさせていたなんてことは避けたいはずです。社員同士の円満な関係を保つためにも、

・新入社員は早めに出勤する

・休憩に入る際は声をかける

・上司、先輩より先に帰らない

などの日本の習慣を先に伝えておくのです。そしてあなたの企業がそれを社員に求めているかどうか、外国人社員もそれを守るべきなのかどうかまで示しておくといいと思います。

この他にも、各企業によって暗黙の常識が存在するはずです。日本語には、「仕事は見て覚える」「空気を読む」「察する」なんて表現もありますが、私たち日本人に比べてそのような概念が弱い外国人にとって、「暗黙の了解」は理解しにくいのです。外国人社員はきっと驚くことと思いますが、今後ともに働く仲間なのであれば知らせておくべきことだと思いませんか。

 

そして2つ目は、業務上使用する単語を統一することです。

「話し合い」「打ち合わせ」「会議」「ミーティング」など、同じ意味を持つ単語が複数存在する場合、日本語学習者は混乱してしまいます。それを避けるため、どういうことかというと、「もう一回やって」と「やり直して」や、「インボイス」と「領収書」など、表現が複数ある単語のどちらを使うのかを統一してしまうのです。そうすれば、外国人社員を混乱させミスや誤解を招くことなく円滑に業務が進むはずです。

これをお勧めする理由は、あくまで業務を円滑に進めるためです。日本語教師としては表現を制限してしまうようなことはしたくないのですが・・・。統一化された表現をしっかり覚えた後で、「実は○○と△△は同じ意味だ」と教えていくのもいいかもしれません。また、新しく入った外国人社員に優先して覚えてほしい単語などもリストアップしておくのもいいと思います。会社でよく使う単語というのは職種によっても変わってくるので、教師側がリストを作るのはなかなか難しいものがあります。

あなたの会社の社員が理解すべき単語は、どんなものがありますか。それを外国人社員が覚えることができれば、今よりずっとスムーズにコミュニケーションができるはずです。


【カタコト日本語×駅】


【カタコト日本語×駅】

自国では車移動が主という外国人も、東京では公共の交通機関を使うことが多くなります。

日本の地下鉄の路線図を初めて見た外国人が、「ラビリンス(迷宮)」のようだと言って驚いたという話はよく聞く話ですよね。

2016年には訪日外国人者数が2000万人を超え、外国人観光客受け入れ態勢整備における多言語案内表示についてのガイドラインが発表されるなど、外国人とのより円滑なコミュニケーション力を身に着けることがますます求められています。

 

以前受け持っていたアメリカ人の生徒の、こんなエピソードがあります。

彼は平日他県で仕事をしていたのですが、週末を東京で過ごすために毎週新幹線を利用して東京に帰ってきていました。しかしある時、何かの理由で新幹線が運休になってしまったことがあるんです。日本語は勉強していた彼でしたが、繰り返し流れる日本語のアナウンスの意味は理解することができず、他の乗客が次々と下車する様子を目の前に、いったい何が起きているのか、どうすればいいのかわかりませんでした。駅員さんに聞いてはみたものの返ってきた答えの意味がわからず、途方に暮れた彼は私に電話をしてきたのです。困ったのは駅員さんです。正確な情報がつかめずイライラしている外国人に突然携帯を渡され、受話器の向こうにいる日本人に状況を説明するなんて、きっと初めてのことだったんじゃないでしょうか。

 

【私たちにできること】

ここで私たちが考えるべきポイントは、「相手は何がわからないのか」です。

あなたが外国で同じ状況にいるところを想像してみてください。あなたの頭の中には、どんなことが浮かんでいるでしょうか。

・なぜ電車が動かないのか

・危険な状況なのか

・運転は再開するのか、しないのか

・他の移動手段は何か

・支払った新幹線の切符代はどうなるのか

情報が理解できないというだけで、あなたの心は不安と恐怖でいっぱいになるはずです。また、次に何をするべきなのかもわからず慌ててしまうのではないでしょうか。

 

そこで私が提案するのは、外国人が視覚で状況が理解できるようにすることです。

外国にいるという状況では、耳で「フォー」という情報を受け取るのと、「4」と書かれた情報を目で受け取るのとでは、どちらの情報に確信がもてますか。

 

【具体的にどうするのか?】

例えば、「運休」「遅延」「事故」「再開時刻不明」「〇〇分後再開予定」「払い戻し」「行先は?」「○○で乗り換え」など、状況を説明したり、相手が知りたがっている情報を把握したりするのに必要となる単語を英語や中国語に訳して暗記カードのようなコンパクトなサイズで用意し携帯しておくのはいかがでしょうか。さらにそのカードの素材をホワイトボードのような書き換え可能な素材にしておきます。そうすれば、〇〇に入る部分をその都度書き変えることもできるし、「行先は?」という質問への回答を外国人に書いてもらうことも、「それなら4番線へ行って(platform 4)」といった指示も出すことができます。

 

特に新幹線や特急電車は、乗車時刻が決まっています。時短でスムーズなコミュニケーション法が必須ですね。鉄道会社の方に届きますように…


【カタコト日本語×保育園】


【カタコト日本語×保育園】

子どもを異国で育てることというのは、いったいどのようなものでしょうか。

近くに相談できる友人がいたり、自分の国の言葉が通じる保育園や幼稚園に子どもを預けることができたりすれば、不安は少ないかもしれません。

しかし、そうでない場合はどうでしょうか。

私の生徒にも、日本で子育てをしているお父さんやお母さんがたくさんいます。

そんな彼らが困ることと言えば、子供用品の買い物、他のママ友とのコミュニケーション、保育園の先生が毎日書いてくれるお手紙や園だよりを理解することなどです。

 

以前、こんなことがありました。

離乳食が始まった子どものために、初めてスーパーに離乳食を買いに行ったというフランス人の女性のお話です。

彼女が離乳食だと思い購入したもの、それは実は高齢者向けの介護食だったんです。彼女はそれを持ってママ友と出かけ、その時に指摘されて初めて気が付いたそうです。「すごく恥ずかしかったし、子どもに申し訳ない気持ちでいっぱいになって情けなかった。」と話してくれました。

 

【あなたができること】

会話が上手な外国人でも、漢字やカタカナを読むのが苦手ということはよくあることです。

そんな彼らのために私たちができることは、必要な情報を理解することを助けてあげることではないでしょうか。

例えば外国人の父兄向けに、「子どもを守る日本語」を1枚の紙にまとめて作り、配布するのはどうでしょうか。

離乳食= baby food

〇〇歳用= 例)3歳から5歳用 (for 3-5 year old baby)

〇〇不使用= 例)小麦不使用 (no flour)

小麦= flour

アーモンド= almond

卵= egg

予防注射= vaccination

お着替え=change of clothes / extra clothes 

 

など、パパやママが理解できた方が安心な表記をまとめておいてあげるのです。

そうすれば、先生方が外国人のパパやママと個別にお話をする時間も節約することができますよね。

 

しつけ、教育、食事やおやつなど、全てが自分の常識とは違う文化の中に子供を預けることということには、不安や心配が伴うことと思います。

保育士さんやママ友の、ほんの小さな心配りで、パパやママは心から喜んでくれることと思います。