【カタコト日本語×会社】


【カタコト日本語×会社】

日本の企業や日本人に囲まれた環境で仕事をしている外国人の前に立ちはだかる壁は、言葉の壁だけではありません。もちろん会社などのフォーマルな場面で使われる日本語は、日本語教育でも中級以降で学ぶ、ちょっと難易度の高い日本語です。そんな日本語の他に外国人を悩ませる壁とは、どんなものでしょうか。それは、文化の違いです。特に自国の会社と日系の会社では、当たり前とされることが全く違うのです。例えば就業時間の長さ、各業務の進捗スピード、休憩や休暇の取り方など、挙げればきりがありません。私の生徒からも、「就業時間を過ぎ自分の仕事も終わっているのに帰ろうとしないのはどうして。」「どうしてわざわざFAXを使うのか?紙の無駄なのではないか。」など、様々な質問を受けます。

【私たちができること】

私が考える、外国人社員との業務を円滑に進めるポイントは2つあります。

1つ目は、ルールではないが一般に常識とされている日本企業に残る風習を書き出し、外国人社員に認識してもらうことです。外国人としても、知らぬ間に失礼な行為をしていた、知らぬ間に人を悪い気にさせていたなんてことは避けたいはずです。社員同士の円満な関係を保つためにも、

・新入社員は早めに出勤する

・休憩に入る際は声をかける

・上司、先輩より先に帰らない

などの日本の習慣を先に伝えておくのです。そしてあなたの企業がそれを社員に求めているかどうか、外国人社員もそれを守るべきなのかどうかまで示しておくといいと思います。

この他にも、各企業によって暗黙の常識が存在するはずです。日本語には、「仕事は見て覚える」「空気を読む」「察する」なんて表現もありますが、私たち日本人に比べてそのような概念が弱い外国人にとって、「暗黙の了解」は理解しにくいのです。外国人社員はきっと驚くことと思いますが、今後ともに働く仲間なのであれば知らせておくべきことだと思いませんか。

 

そして2つ目は、業務上使用する単語を統一することです。

「話し合い」「打ち合わせ」「会議」「ミーティング」など、同じ意味を持つ単語が複数存在する場合、日本語学習者は混乱してしまいます。それを避けるため、どういうことかというと、「もう一回やって」と「やり直して」や、「インボイス」と「領収書」など、表現が複数ある単語のどちらを使うのかを統一してしまうのです。そうすれば、外国人社員を混乱させミスや誤解を招くことなく円滑に業務が進むはずです。

これをお勧めする理由は、あくまで業務を円滑に進めるためです。日本語教師としては表現を制限してしまうようなことはしたくないのですが・・・。統一化された表現をしっかり覚えた後で、「実は○○と△△は同じ意味だ」と教えていくのもいいかもしれません。また、新しく入った外国人社員に優先して覚えてほしい単語などもリストアップしておくのもいいと思います。会社でよく使う単語というのは職種によっても変わってくるので、教師側がリストを作るのはなかなか難しいものがあります。

あなたの会社の社員が理解すべき単語は、どんなものがありますか。それを外国人社員が覚えることができれば、今よりずっとスムーズにコミュニケーションができるはずです。